ツール連携

Chatworkの過去ログを社内のナレッジ共有に使う

Chatworkの過去ログを社内のナレッジ共有に使う

Chatworkは日本の中小企業で広く使われていて、取引先とのやりとりが社内チャットに混在している点がSlackと大きく違います。この構造がAI連携の設計を変えます。

社外を含むという前提が最大の違い

Chatworkでは、取引先や協力会社を招いたグループチャットが日常的に使われます。ここを無自覚にAIの参照範囲へ入れると、他社の情報が自社の回答に混ざります。

チャット種別 参照対象 理由
社内グループ 通常の社内情報
社外を含むグループ 要判断 秘密保持契約の範囲を確認
ダイレクトチャット × 個人間のやりとり
マイチャット × 個人のメモ領域

社外グループはNDAの範囲を確認する

取引先との会話を自社のAIに参照させることが、締結済みのNDAの範囲内かどうかは契約によって解釈が分かれます。確認せずに進めると、後から取引先に説明できません。

それでも社外グループの価値は高い

難しいからといって全部外すと、実は最も価値のある情報を捨てることになります。取引先との合意事項、仕様の決定経緯、トラブル対応の履歴——これらは社外グループにしか残っていないことが多いからです。

「自社の発言のみ」で始める

そこで相手の発言を除外し、自社側の発言だけを対象にします。合意事項も仕様の決定経緯も、自社の誰かが書き残していることが多いためです。

この切り方ならNDAの論点はかなり軽くなります。「他社の情報をAIに読ませたか」を問われたときに、読ませていないと答えられる状態を作れます。

タスク機能が構造化データになる

ChatworkにはSlackにない利点があります。タスク機能です。ここには「誰が・何を・いつまでに」が構造化された形で入っています。

タスク機能はSlackにない利点

「誰が・何を・いつまでに」が構造化された形で入っており、本文から抽出するより精度が高く、完了・未完了の状態も持っています。連携の初期段階では、本文よりタスクを優先して取り込むほうが費用対効果が高いことがあります。

  • 「この案件の未完了タスクは?」に正確に答えられる
  • 期限切れタスクの一覧が出せる
  • 担当者ごとの負荷が見える

ファイル添付の扱い

Chatworkは添付ファイルのやりとりが多い環境です。本文には「確認お願いします」しか書かれておらず、実体は添付のExcelやPDFにあるというケースが頻繁にあります。

本文だけを対象にすると、「その話がどこにあるか」は分かっても「中身は何か」に答えられません。添付を含めるかどうかは、初期に決めておく必要があります。

本文には「確認お願いします」しか書かれていない

実体は添付のExcelやPDFにあるケースが頻繁にあります。ただし添付を全部読み込むと、処理量とコストが跳ね上がります。拡張子で絞る(PDF・Excel・Wordのみ、画像と動画は除外)のが現実的です。

過去ログは、公式には遡れない

ここが設計の分かれ目です。「数十万件の過去ログをまとめて取り込む」という前提で見積もりを取ると、実装段階で崩れます。

Chatwork API のメッセージ取得は GET /rooms/{room_id}/messages ですが、公式仕様は次のとおりです。

項目 仕様
1回あたりの上限 最大100件
force=0(既定) 前回取得分からの差分のみ
force=1 強制的に最新の100件
過去へ遡る手段 公式仕様に記載が無い

つまりAPIは「これから発生するメッセージを拾い続ける」用途に作られていて、過去を掘り返す用途には作られていません。

「まず過去ログを全部入れる」から始めない

レスポンスに含まれる message_id を使って遡る方法が有志から共有されていますが、これは公式に文書化された手段ではありません。仕様変更で止まる可能性があるものを、初回取り込みの前提に置かないでください。

現実的な組み方は「今日から差分で貯め始める」です。force=0 の差分取得は、この用途に合っています。過去分がどうしても必要なら、APIとは別に管理画面からのエクスポートが使えるかを先に確認してください。

この制約は、タスク優先の理由にもなる

本文の過去ログが遡れない一方で、タスクは現時点の未完了・期限を持っています。「過去を遡れないなら価値が出ないのでは」という懸念に対して、タスクから始めれば初日から答えられる問いがあるのが実務上の答えになります。

まとめると

  1. ダイレクトチャットとマイチャットは対象外にする
  2. 社外グループは「自社の発言のみ」で始める(NDAの論点が軽くなる)
  3. タスク機能を優先的に取り込む(構造化されていて精度が高い)
  4. 添付は拡張子で絞る
  5. 過去ログは公式には遡れない。今日から差分で貯める設計にする

Slackと同じ設計で進めると、2番目で必ず止まる

社外が混ざる前提から入るのが、Chatwork環境の要点です。Slackを対象にする場合の記事や事例をそのまま持ち込むと、NDAの論点で手戻りになります。

社外を含む会話の、保存先と保存期間をまとめました

主要4サービスについて、保存先(at rest)と処理先(推論)を分けて書いています。データを日本国内に閉じることは、現時点でどのサービスでもできません。出典と確認日つき。

どこから対象にすべきか、3分で分かります

社内グループだけか、社外も含めるか、タスクから始めるか。かんたんな設問に答えるだけで診断します。費用はかかりません。

この記事について:メッセージ取得の上限と force パラメータの挙動は Chatwork API の公式リファレンス(GET /rooms/{room_id}/messages)に基づいています。message_id を使って過去に遡る方法は有志が公開しているもので、公式仕様に記載が無いため推奨として扱っていません。管理画面からのエクスポート可否はプランや契約により異なるため、断定していません。「社外グループに価値が残っている」といった記述は現場で観測した傾向であり、調査統計ではありません。