ツール連携

Googleドライブ全体をAIの参照先にするときの設計

Googleドライブ全体をAIの参照先にするときの設計

Googleドライブは、多くの会社で「とりあえず全部そこにある」場所になっています。提案書も議事録も見積書も、フォルダのどこかにある。だからこそ「ドライブ全部をAIの参照先にしたい」という要望が出ます。

技術的には可能です。ただし全件を対象にすると、ほぼ確実に精度が落ちます。理由を順に説明します。

全件対象が失敗する理由

ドライブに溜まっているもの AIから見たときの問題
提案書の v1, v2, v3_最終, v3_最終_修正 どれが有効版か判断できない
他社から受領した資料 自社の見解として引用される
作りかけ・下書き 未確定の内容が確定情報として出る
個人の作業フォルダ そもそも共有を意図していない

「最終」が最新とは限らない

ファイル名に「最終」が付いているものが最新とは限らないのは誰もが知っていますが、AIはそれを知りません。

では更新日時で判断させればよいかというと、これも当てになりません。Drive API の modifiedTimeThe last time the file was modified by anyone(誰かが最後に変更した時刻)と定義されており、誤字の修正も全面改訂も同じように新しくします。閲覧では変わらないので「開かれただけ」の心配は不要ですが、更新日が新しいことは、内容が有効であることを意味しません。

受領資料の混入は特に危険

他社の提案書をドライブに保存していて、それがAIの参照範囲に入っていると、「うちのサービスの特徴は」という問いに他社の文言が返ることがあります。

「うちのサービスの特徴は」に、他社の文言が返る

他社の提案書をドライブに保存していて、それがAIの参照範囲に入っていると実際に起きます。「受領資料」フォルダを明示的に除外するのは、最初にやるべき作業のひとつです。

フォルダ構造を信用しない

「フォルダで整理されているから大丈夫」という前提は、たいてい崩れています。長く運用されたドライブでは、

  • 同じ内容が複数のフォルダにコピーされている
  • 組織変更前のフォルダ構造が残っている
  • 「一時」「その他」フォルダが肥大化している

という状態になっています。フォルダ名から中身を推測させる設計は避けてください。

現実的な絞り込み方

おすすめは、フォルダではなく「組織として使われているか」で切ることです。

  1. 直近1年以内に更新されたファイルに限定する
  2. そこから、共有されている人数が一定以上のものを優先する
  3. 受領資料・個人フォルダ・アーカイブを除外する
  4. 残ったものを対象にする

2番目が効く

複数人に共有されているファイルは、組織として有効な情報である可能性が高い。逆に作成者しか触っていないファイルは、参照させても価値が低いことが多いです。フォルダ名より、共有範囲のほうが信用できます。

「閲覧者数で絞る」は、そのままでは実装できない

ここは間違えやすいので分けて書きます。「何人が見たか」を Drive API から取ることはできません。

取りたいもの API上の実態
閲覧した人数 該当するフィールドが無い
viewedByMe 真偽値。APIを叩いている本人が見たかどうかだけ
viewedByMeTime 同じく本人の最終閲覧時刻
permissions 誰に共有されているかは取れる。人数を数えられる

そのため実装では、「閲覧者数」ではなく「共有先の人数」を使います。意図はほぼ同じで、こちらは確実に取得できます。

監査ログで閲覧を数える場合の注意

管理コンソールのDriveログには View イベントがあります。ただし公式に次の注記があります。

Item content access events aren’t logged when a file is viewed or opened by a user in Drive for web, Drive on mobile, or the Drive for desktop app.

(ウェブ版Drive・モバイル・デスクトップアプリでファイルを閲覧・開いた場合、コンテンツアクセスのイベントは記録されない)

さらに、アクティビティダッシュボード側では利用者が自分の閲覧履歴を非表示にできます。「閲覧数が少ない=使われていない」と判断すると、実態を取り違えます。

共有設定がそのまま権限になる

Googleドライブの利点は、ファイルごとの共有設定が明確なことです。権限引き継ぎ型で構成する場合、この設定をそのまま使えます。

ただし前提として、共有設定が正しい状態である必要があります。実際には「リンクを知っている全員」が広範囲に使われていることが多く、AI経由で初めてその広さが可視化されます。

「リンクを知っている全員」の一覧を出してみる

連携前に、この設定になっているファイルの一覧を出してください。想定より多いはずです。AI経由で初めてその広さが可視化されるより、先に自分で見ておくほうがいい。棚卸しの良い機会になります。

ファイル形式ごとの扱い

形式 扱いやすさ 備考
Googleドキュメント 構造が取れる。最も扱いやすい
スプレッドシート 表として整っているかに依存
スライド 断片的な文言が多く文脈が薄い
PDF テキスト層の有無で変わる
画像・動画 × 初期は除外が現実的

スライドは要注意

提案書がスライドで作られている会社は多いのですが、1枚あたりの文字数が少なく、前後の文脈がないと意味が通りません。取り込むならスライド単位ではなく、ファイル単位でまとめて渡す構成にしてください。

Googleのデータリージョンと保存期間を確認しました

Workspace のデータリージョンは米国か欧州のみで、日本は選べません。また Gemini Notebook には、組織のファイル共有設定とデータリージョン設定が適用されません。主要4サービスを比較した表です。

まとめ

Googleドライブ連携の要点は、「全部入れない」ことに尽きます。

  1. 直近1年+複数人に共有されているファイルに絞る(閲覧者数はAPIから取れない)
  2. 受領資料フォルダを明示的に除外する
  3. 「リンクを知っている全員」の設定を棚卸しする
  4. 画像・動画は初期対象から外す
  5. スライドはファイル単位でまとめて渡す

どこまで絞るべきか、3分で分かります

どのフォルダを対象にするか、どこから除外するか。かんたんな設問に答えるだけで診断します。連携作業に入る前に見ておくと、精度の手戻りが減ります。費用はかかりません。

この記事についてmodifiedTime / viewedByMe / permissions の定義は Google Drive API v3 の files リファレンス、閲覧イベントの記録範囲は Google Workspace 管理者ヘルプ「Drive log events」の記載に基づいています。ファイル形式ごとの扱いやすさ(◎△×)は当社の実装時の判断であり、公開された比較基準ではありません。「受領資料の混入」「一時・その他フォルダの肥大化」といった記述は、現場で観測した傾向であって調査統計ではありません。