AI推進の担当に指名された。ただ何から手をつければいいか分からない——これは珍しい状況ではありません。多くの場合、社内に前例がなく、相談できる相手もいません。
最初の3ヶ月でやるべきことを、順番に整理します。ツールを選ぶのは、実はかなり後ろです。
1ヶ月目:現状を数字にする
いきなり何かを導入したくなりますが、先に手元の状況を把握します。ここを飛ばすと、半年後に効果を説明できません。
やること
- 社内で繰り返されている質問を集める——経理・情シス・総務に「よく聞かれること」を10個ずつ出してもらう
- その質問に答えるのに何分かかっているか聞く——正確でなくていい。体感で構わない
- いま使っているツールを一覧にする——メール、チャット、ファイル共有、業務システム
1番目が最も価値がある
繰り返されている質問は、そのまま最初に解くべき課題です。そして「同じことを何度も聞かれている」状態は、当事者にとって明確な不満なので、協力を得やすい。
この1ヶ月で集めた質問リストは、後で導入したツールの評価基準にもなります。「この20個に答えられるか」で判断できます。
2ヶ月目:小さく試す
集めた質問のうち、いちばん頻度が高くて、いちばん機密性が低いものを1つ選びます。そこだけを対象に試します。
対象を1つに絞る理由
複数を同時に試すと、うまくいかなかったときに原因が分かりません。1つなら、成功しても失敗しても学びが残ります。
| 選ぶ基準 | 理由 |
|---|---|
| 頻度が高い | 効果が数字で見えやすい |
| 機密性が低い | 権限の議論を後回しにできる |
| 答えが既に文書にある | 文書化から始めなくて済む |
| 困っている人が特定できる | 協力者が確保できる |
4番目を軽視しない
「これが解決したら嬉しい」と言ってくれる人がいる領域を選ぶと、試行錯誤に付き合ってもらえます。誰も困っていない課題を解いても、フィードバックが返ってきません。
3ヶ月目:広げる準備をする
試した結果が出たら、次は横に広げます。ただしここでいきなり全社展開に進むと失敗します。
先に決めておくこと
- 誰が質問に答えるか——使い方の質問は必ず出ます。窓口が無いと担当者に全部来ます
- 何を入力してよいか——最低限のルールを1枚にまとめる
- どの部署から広げるか——協力的な部署を2番目に選ぶ
2番目は、最も困っている部署ではなく、最も協力的な部署
成功事例が1つできると、その後の展開が急に楽になります。困っている部署は事情が複雑なことが多く、2番目には重すぎます。
この3ヶ月でやらなくていいこと
逆に、後回しでよいものも挙げておきます。担当者が疲弊する原因は、たいてい優先順位の付け間違いです。
- 全社の利用ルールを完璧に作る——1つ試す段階では最低限で足りる
- すべてのツールとの連携を設計する——1つ動いてから考える
- 全社員向けの研修を企画する——使う場面が固まる前の研修は忘れられる
- 複数ベンダーの詳細比較——要件が固まっていないと比較できない
要件が決まる前に見積もりを取らない
比較できない見積もりが並ぶだけになります。1ヶ月目の質問リストが、そのまま要件になります。先にそれを作ってから各社に渡してください。
3ヶ月後に手元に残っているもの
- 社内で繰り返されている質問のリスト(20〜30件)
- そのうち1つを解決した実績と、前後の数字
- 協力してくれる部署が2つ
- 最低限の利用ルール1枚
この4つがあれば、次の予算の話ができます。逆にこれが無いまま大きな導入に進むと、根拠のない投資になります。
最初の90日で決める値は、各社の条件から逆算できます
保持期間を何日にするか、評価ボタンをどう扱うか、どの情報を入力してよいか。主要4サービスの実際の条件を確認して埋めた表です。出典と確認日つき。
この記事について:90日の区切り方と各期間にやることは、当社が推進を支援する際に用いている進め方です。他の進め方と比較した検証は行っていません。推進担当がつまずく箇所の傾向も、観測に基づくもので統計ではありません。