費用・ベンダー選定

情シスがいない会社が選ぶべき支援会社のタイプ

情シスがいない会社が選ぶべき支援会社のタイプ

ノークリサーチが2025年5月に年商500億円未満の中堅・中小企業800社を調べたところ、情報システムの専任者が1人だけの会社が24.5%ありました。2023年の21.3%から増えています。専任者が1人もいない会社は、この調査の枠外です。

その状態で「AIを入れろ」と言われた担当者が、最初に詰まるのが依頼先選びです。比較記事を開いても判断できません。あの手の記事は、要件を出せる担当者がいる前提で書かれているからです。

この記事では、支援会社を会社の種類で分類しません。自社に無い機能がどれかで分けます。そこが決まらないと、どの会社に頼んでも噛み合いません。

「情シスがいない」は、3つの別々の欠落

情シスという言葉が指す仕事は、性質の違う3つの層に分かれています。同じ「いない」でも、どの層が抜けているかで頼む先がまったく変わります。

1

一次窓口の層手を動かす

PCが起動しない、プリンタが繋がらない、入社する人のPCを用意する。発生したものに対応する仕事です。

2

運用管理の層状態を保つ

アカウントと権限、資産台帳、バックアップ、セキュリティ設定。壊れていなくても手入れが要る領域です。

3

判断・選定の層決める

何を買うか、どの方式でいくか、その見積もりが妥当か。手を動かす仕事ではなく、決める仕事です。

AI導入で詰まるのは、ほぼこの層です。そして後述のとおり、この層が市場で最も高く、最も手に入りにくい。

1と2は「無い」ことに気づける

一次窓口が無ければ、誰かのPCが止まった時点で全社が困ります。運用管理が無ければ、退職者のアカウントが残っていることに監査や取引先の指摘で気づきます。症状が出るので、欠けていることが分かります。

だから多くの会社は、この2層をまず埋めようとします。実際、後で見るとおり市場もこの2層向けの商品が厚い。

3だけは「無い」ことに気づけない

判断・選定の層が抜けていても、日常業務は止まりません。決めなければならない場面が来るまで、欠落は表面化しないからです。

そして決める場面が来たとき、たいていこうなります。営業から提案書が来る。金額が書いてある。それが高いのか安いのか、その方式が自社に合っているのか、社内に判断できる人がいない。「まあ、そういうものなんでしょう」で押印する。

AI導入は、この層をいきなり全力で使う

PCの入れ替えなら、前回と同じにすれば大きくは外しません。AI導入には「前回」がありません。何を対象にするか、どこにデータを置くか、どこまで自動化するか、いくらが妥当か。判断の材料が社内に一つも無い状態で、判断だけを求められます。

市場価格が、どの層が希少かを教えてくれる

ここは推測が要りません。情シス代行サービスは料金を公開しているので、どの層がいくらで買えるのかが分かります。3社の公開プランを並べます。

サービス プラン 月額 主な範囲
ちょこっと情シス ライト 3万円〜 PC・クラウドの基本設定、選定相談
スタンダード 5万円〜 +仕様検討・導入手順設計・バックアップ整備
プレミアム 要問い合わせ +ベンダー選定・セキュリティ設計・経営層向け提案
情シス代行パック ベーシック 4万円 ヘルプデスク月8時間・50台まで・アカウント管理なし
スタンダード 8万円 月25時間・100台まで・アカウント管理2種
プラチナ 15〜25万円 月30時間・100台まで・アカウント管理4種
情シス365 運用支援 12万円〜 月10時間/12,000円/時。ヘルプデスク・資産管理
IT顧問 10万円〜 月5時間/20,000円/時。ベンダー選定・方式の妥当性確認
専任体制 要見積もり プロジェクトと日常運用の並行

手を動かす層は、月3〜8万円で買える

一次窓口の層は完全に商品化されています。月3万円から始められて、初期費用が無料のところもあり、最短3日で開始できます。ここが足りないだけなら、悩む理由はほとんどありません。数社に見積もりを取って、対応時間の上限と台数上限で比べれば決まります。

判断する層だけ、時間単価が跳ね上がる

情シス365の2つのプランを見比べてください。ここに市場の答えが出ています。

手を動かす時間より、決める時間のほうが高い

運用支援は12,000円/時、IT顧問は20,000円/時。同じ会社の同じ月額帯で、単価が1.7倍違います。しかも顧問プランは対応社数が10社までに限定されている。供給できる量に上限があるということです。

そして残りの2社では、判断・選定を含む最上位プランに金額が書かれていません。ちょこっと情シスのプレミアムは「お問い合わせ」、情シス365の専任体制は「要見積もり」。

金額が書けないのは、範囲が決まらないから

これは各社が隠しているのではありません。ベンダー選定の支援は、対象がAIツール1つなのか基幹システムの入れ替えなのかで工数が桁で変わります。定額商品にできない性質の仕事です。

裏を返すと、判断・選定を「月◯万円のプランに含まれています」と言い切る提案が来たら、含まれている範囲を必ず確認してください。相談は受けるが決定には関与しない、という意味であることが多い。

プラン表に書かれていない上限が、後で効いてくる

公開されている料金表は、範囲だけでなく上限を書いています。ここを読み飛ばすと、契約後に想定が崩れます。

時間の上限

情シス代行パックのベーシックは、月額4万円でヘルプデスクが月8時間までです。1日8時間ではありません。月に8時間。社員30人の会社で、PCの不調が週に2〜3件出れば、それだけで使い切る量です。

スタンダード(月8万円)で月25時間、プラチナ(月15〜25万円)でも月30時間。金額が6倍近くになっても、時間は4倍未満にしかなりません。上位プランで増えているのは時間ではなく、アカウント管理の対象種類です。

台数とアカウントの上限

同じサービスで、サポート台数はベーシック50台、スタンダード以上100台。アカウント管理はベーシックで対象外、スタンダードで2種、プラチナで4種です。

「2種」というのは、たとえばMicrosoft 365と勤怠システムで2つ、という数え方になります。AIツールを追加で契約すれば3種目です。プラン変更の話が、AI導入の初月に出てきます。

月額の外に出る費用

情シス365は、超過分を同じ単価で精算し、割増をつけないと明記しています。これは良心的な部類で、明記していない会社では超過単価が交渉事になります。加えて、オンサイト訪問の交通費は実費、ライセンス費と機器代は別途というのが共通の扱いです。ちょこっと情シスも訪問対応は別途料金と書いています。

月額8万円のプランで、実際に請求される内訳

○ 月額に含まれる

  • ヘルプデスク 月25時間まで
  • サポート対象 100台まで
  • アカウント管理 2種まで
  • 定例会

✕ 月額の外に出る

  • 25時間を超えたぶんの時間単価
  • 3種目以降のアカウント管理
  • オンサイト訪問の交通費(実費)
  • ライセンス費・機器代(実費)
  • 大量キッティング・他社システム移行

AIツールを1つ契約すると、右側が2項目動く

アカウント管理が3種目に入り、初期設定の問い合わせでヘルプデスクの時間を使います。

月額は上限つきの定額。上限の外側に何があるかを、契約前に一覧にしておく

比較すべきは月額ではなく「上限に当たったときの単価」

月額で並べると3万円と12万円は4倍差に見えます。しかし実際に払う額を決めるのは、上限を超えた後の時間単価と、月額の外に出る費目です。見積もりを取るときは、想定より2倍使った月にいくらになるかを必ず聞いてください。

自社に無いのはどの層か

ここまでの3層のうち、自社に何が無いのかを判定します。次の質問に答えてください。

質問 「いいえ」なら欠けている層 空けたままにすると
PCが動かなくなったとき、社内の誰に言えばいいか全員が知っているか 一次窓口 詳しい人に質問が集中し、その人の本業が削られる
先月退職した人のアカウントが、いま止まっていると言い切れるか 運用管理 AIツールを足すたびに、止め忘れの対象が増える
いま使っているSaaSの一覧と、それぞれの契約金額をすぐ出せるか 運用管理 AIの費用対効果を出そうにも、比較する分母が無い
ベンダーの見積もりが高いか安いか、社内で判断できる人がいるか 判断・選定 提示された金額が基準になる。相場を知らないまま契約する
「この方式では駄目です」と提案を突き返した経験が社内にあるか 判断・選定 合わない方式のまま進み、動くものが出てから作り直す

下2つが「いいえ」なら、情シス代行だけでは埋まらない

ここが最も多いパターンです。一次窓口と運用管理は何とか回っている、あるいは代行を入れれば埋まる。しかし決める人がいない。

この状態で情シス代行の下位プランを契約しても、AI導入は1ミリも進みません。月3万円のプランに含まれているのは「PCの設定と問い合わせ対応」であって、「AIを何に使うべきかの判断」ではないからです。契約した機能と、欠けている機能が違います。

全部が「いいえ」でも、埋める順番は下からではない

3層すべてが空いている会社も珍しくありません。このとき一次窓口から順に埋めたくなりますが、AI導入を進めたいなら順番が逆です。

一次窓口と運用管理は、後から追加しても手戻りがありません。しかし判断・選定を空けたまま先に進めると、選んだツールも決めた方式も後から覆ることになり、そこまでの支出が消えます。

社内に判断できる人がいなくても、比較の土台になります

主要4サービスの学習利用・保存期間・保存先・人的レビューを、同じ項目で並べた表です。Excel版はサービスで絞り込めます。出典と確認日を全項目に書いてあるので、ベンダーの説明と突き合わせられます。

層ごとに、頼む先が変わる

欠けている層が決まれば、頼む先はほぼ自動的に決まります。

欠けている層 頼む先 費用の目安 選ぶときに見るもの
一次窓口 情シス代行の下位プラン 月3〜8万円 対応時間の上限、台数上限、開始までの日数
運用管理 情シス代行の中〜上位プラン 月8〜25万円 アカウント管理の対象種類、オンサイトの有無
判断・選定 顧問型・伴走型 時間単価2万円前後/要見積もり 決定に関与するのか、助言だけか
(要件が固まっている大規模案件) 大手SIer 案件次第 要件定義書が既にあるか

「判断・選定」を頼むときだけ、確認の仕方が違う

上2層は、上限と価格を比べれば選べます。数字で書いてあるからです。判断・選定の層は数字で書けないので、代わりに初回の打ち合わせで何を聞かれるかを見ます。

判定 初回で聞かれること 読み取れること
「どんなAIを入れたいですか」 要件は自社で出す前提。判断の層は買えていない
「予算はいくらですか」 金額から逆算して範囲を決める
「同じ質問が繰り返されている業務はありますか」 課題から入っている
「その作業に何分かかっていますか」 効果を数字で出す前提
「いま誰がその作業をしていますか」 体制まで見ている

初回の質問は、その会社の進め方をそのまま表します。要件を出せない相手に要件を尋ねる会社は、要件を作る仕事を商品に含んでいません。

大手SIerが候補から外れる理由

比較記事の上位には大手SIerが並びますが、優劣の問題ではありません。大手SIerが売っているのは「決まっている要件を、確実に、大規模に作る」ことです。これは上の3層のどれでもなく、4つ目の別の仕事です。要件が固まっていない小規模案件は、先方にとっても採算が合いません。

次のどれかに当てはまるなら候補に入ります。基幹システムの改修を伴う、拠点が複数で権限体系が複雑、業界の規制対応が必要、すでに要件定義書がある。どれにも当てはまらないなら、会社の規模は判断材料になりません。

契約前に、必ず確認する3点

どの層を頼む場合でも共通です。

社内調整はどこまで含まれるか

情シスがいない会社では、担当者は他業務との兼任です。そして最も時間を取られるのが社内調整——他部署への説明、経営層への報告、稟議の作成。

稟議に使える資料を用意してくれるか、他部署向けの説明会に同席してくれるか、導入後の報告資料を作ってくれるか。「技術的な支援のみ」なら、これらは全部自社の兼任担当者がやることになります。契約前にその工数を見積もっておく必要があります。

運用開始後の連絡先と反応速度

情シスがいないということは、不具合が起きたときに社内で対応できないということです。何かあったときどこに連絡するか、返信の目安は何時間・何営業日か、それは契約に含まれるか別料金か。

3つ目を曖昧にしたまま契約しない

後から保守費用の交渉が発生します。しかもその時点では、他社に乗り換えるコストのほうが高くなっています。交渉力が無い状態で金額を決めることになります。

解約の条件

ちょこっと情シスは初年度が1年契約で、2年目以降が月単位。情シス365は初回契約が3ヶ月から。合わなかった場合に抜けるまでの期間が、契約によって数倍違います。

最初の1社が当たりである保証はありません。抜けやすさは、選定の精度と同じくらい重要です。

やってはいけない選び方

月額の安さだけで選ぶ

すでに見たとおり、月額4万円のプランはヘルプデスク月8時間・アカウント管理なしという中身です。安い見積もりは範囲が狭いだけで、上限に当たった後の単価と月額外の費目を含めると逆転します。

「AIに詳しい人」に頼む

紹介自体は良いのですが、「AIに詳しい人」と「判断・選定の層を埋められる会社」は別物です。技術を知っていることと、自社の業務に対して「その方式は合わない」と言えることは、必要な能力が違います。

1社だけ見て決める

比較しないと、提示された内容が妥当かどうかの基準がありません。判断・選定の層が空いている会社ほど、基準を外部から借りるしかないので、最低2社は話を聞いてください。断る手間より、間違えた場合の損失のほうが大きい。

規模が小さいことは不利ではない

従業員数が少ない会社のほうが、決裁者が近く、部署間の調整が少なく、既存システムも複雑でないぶん、導入そのものは速く進みます。不足しているのは体制であって、条件は有利です。「小さいから無理」ではなく、「欠けている層だけを外から補う」という組み方が合います。

まとめ

情シスがいない会社が最初にやるべきなのは、支援会社を比較することではなく、自社に無いのがどの層かを決めることです。

  1. 一次窓口——月3〜8万円で商品化されている。上限時間と台数で選べる
  2. 運用管理——月8〜25万円。アカウント管理の対象種類を見る
  3. 判断・選定——時間単価2万円前後、または要見積もり。定額商品になっていない

比較記事の一覧表は、ほぼ1と2の話です。AI導入で欠けているのは3で、そこは表に載りません。

要件が固まっていない段階からご相談いただけます

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出典:一人情シスの割合はノークリサーチ「2025年版 中堅・中小企業のIT人材動向」(2025年5月調査/年商500億円未満800社/2025年10月14日発表)。料金は各社が公開しているプラン表(ちょこっと情シス、情シス代行パック、情シス365)を2026年8月時点で参照。金額・上限は改定される場合があります。

この記事について:情シスがいない会社向けの進め方は当社の整理であり、比較検証の結果ではありません。料金の実態は、当社が2026年8月に21社のサイトを巡回して調べた結果に基づいています。判断・選定の層をどう埋めたかの実例は入っていません。