AI導入がうまくいかなかった会社の話を聞くと、原因が技術ではなく支援会社の選び方にあったケースが相当あります。
比較記事はたくさんありますが、選定を失敗した側の話はあまり出てきません。掲載されている会社がいる媒体では、書きにくい内容だからです。
この記事では、実際に失敗した6つのパターンと、それぞれの見分け方を扱います。どれも比較記事の一覧表には載っていない項目です。
一覧表で決まるのは最初の3社まで
比較記事の一覧表(対応領域・料金・実績社数)で絞れるのは候補までです。そこから先の判断材料は、一覧表には載っていません。載せると掲載企業に不利になるからです。
1. 提案の内容ではなく、提案の速さで選んでいる
問い合わせから2日で提案書が出てくる会社と、2週間かけてヒアリングしてから出す会社。前者のほうが仕事が速そうに見えます。
ただしヒアリングなしで出せる提案は、どの会社にも出せる提案です。自社の業務を聞かずに作られた提案書は、テンプレートに社名を差し替えたものである可能性が高い。
「御社の課題は◯◯です」と初回で言い切る提案
その◯◯を、全社に言っている可能性があります。ヒアリングなしで出せる提案は、どの会社にも出せる提案です。
見分け方
提案書に自社固有の情報が何個入っているかを数えてください。
| 判定 | 提案書に書かれているもの |
|---|---|
| ○ | 実際に使っているツール名(kintone・Google Drive など具体名) |
| ○ | 部署の構成と人数 |
| ○ | ヒアリングで出た実際の業務フロー |
| ○ | 自社の業界特有の制約 |
| ✕ | 一般的な課題(属人化・情報が探せない・引き継ぎ)だけ |
| ✕ | 他社事例のスクリーンショットが大半 |
○が2つ以下の提案書は、比較対象になりません。社名を差し替えれば他社にも出せるものだからです。
2. 「何でもできます」を信用してしまう
できないことを言わない会社は、一見すると頼もしく見えます。しかし実際の導入では、必ずできないことが出てきます。
そのとき、事前に「これは難しい」と言われていれば想定内で済みます。言われていなければ、「話が違う」という不信から始まります。
提案の場で確認すべきなのは、できることではなくできないことです。
- 「うちの環境で、うまくいかない可能性があるのはどこですか」
- 「過去に想定より時間がかかった案件は、何が原因でしたか」
- 「この構成で対応できない業務はありますか」
答え方で経験値が分かる
ここに具体的に答えられる会社は、実際に手を動かしています。「特にありません」と答える会社は、経験が浅いか、売ることを優先しています。
なぜ「できないこと」を聞くのか
実際の導入では、必ずできないことが出てきます。問題はそれが起きることではなく、いつ分かるかです。
| いつ分かるか | 起きること |
|---|---|
| 提案の段階で言われる | 想定内。範囲を調整して進む |
| 着手後に判明する | 「話が違う」から始まる。以降の信頼が落ちる |
| 納品後に判明する | 使われないまま終わる |
できないことを先に言う会社は、売りにくいことを承知で言っています。その姿勢自体が判断材料です。
3. 自社側の作業量を確認していない
見積書に載るのは支援会社の工数だけです。ところが実際には、発注側にも相当な作業が発生します。
| 発注側でしか,できない作業 | 見落とされやすさ |
|---|---|
| 対象データの中身を確認する | 高い |
| 誰に何を見せるかを決める | 高い |
| 関係部署との調整 | 非常に高い |
| 社員への説明と周知 | 高い |
「特に必要ありません」は警戒する
「弊社側では、どのくらいの工数が必要になりますか」——この質問に明確に答えられる会社は、実際の進め方を分かっています。データの確認も部署の調整も、発注側にしかできない作業です。それを「不要」と言う相手は、進め方を知らないか、後で揉めます。
4. 導入までしか見ていない契約になっている
契約の範囲が「構築して納品するまで」で終わっていると、使われないまま終わっても契約上は完了です。
実際に困るのは納品後です。現場が使わない、精度が出ない、質問が集中する。ここに誰も責任を持たない構造だと、社内の担当者がひとりで抱えることになります。
確認すること
- 納品後、何ヶ月間サポートが含まれるか
- その期間に何をしてくれるのか(質問対応だけか、改善も含むか)
- 定着しなかった場合、何をしてくれるのか
3番目に答えられる会社は多くない
答えがないこと自体は問題ではありません。問題は、答えがないと知らないまま契約することです。「そこは範囲外です」と言われたなら、定着は自社の責任として体制を組めばいい。知らずに進めると、社内の担当者がひとりで抱えることになります。
5. 相見積もりの前提を揃えていない
3社から見積もりを取って、金額が倍以上違う。よくある状況ですが、たいてい含まれている範囲が違うだけです。
- A社:1システムとの連携のみ
- B社:3システム+データ整理を含む
- C社:全社展開と研修まで
この3つを金額で比べても意味がありません。先に「何を含めるか」を自社で決めて、同じ条件で出してもらうのが唯一の解決策です。
渡す1枚に書くこと
- つなぐシステム名と数(例:Google Drive・kintone の2つ)
- 対象部署と人数(例:営業部 15名)
- データ整理の範囲(自社で行う/依頼する)
- 期間(例:3ヶ月)
- 納品後のサポート(例:6ヶ月分を含める)
この5行を全社に同じ形で渡す。それだけで比較可能な見積もりが揃います。渡さないと各社が自社に都合のいい前提で書きますが、それは相手が悪いのではなく、前提を指定していないからです。
6. 実績の中身を聞いていない
「導入実績◯社」は、ほとんど情報量がありません。聞くべきは件数ではなく、
- 自社と同じ規模の会社の実績があるか(従業員数が10倍違えば別物)
- 自社と同じ体制の会社の実績があるか(情シスの有無)
- その案件はいまも使われているか
3番目が核心
導入した実績はあっても、いま動いているかは別の話です。「その会社さんは今も使われていますか」と聞いて、具体的に答えられるかを見てください。答えられないなら、納品後の関係が続いていないということです。
ベンダーの説明と、公式ドキュメントを突き合わせられます
主要4サービスの契約条件を、公式ドキュメントから確認して埋めた表です。「本体は安全」がそのまま拡張機能に適用されるとは限りません。別条件になる箇所をサービスごとに書いています。出典と確認日つき。
まとめ:確認すべき6つ
- 提案書に自社固有の情報が入っているか
- できないことを言うか
- 自社側の工数を提示できるか
- 納品後の範囲が契約に入っているか
- 相見積もりの条件を揃えたか
- 実績が「いまも動いているか」を答えられるか
どれも、比較記事の一覧表には載っていない項目です。一覧表で絞るのは最初の3社までで、そこから先はこの6つで決まります。
何を頼むべきかが決まっていないなら、先に整理できます
どの業務から始めるか、どこまでを外部に頼むか。かんたんな設問に答えるだけで診断します。相見積もりに渡す条件を決める材料になります。費用はかかりません。
この記事について:選定でつまずく箇所の分類は当社の整理です。料金の公開状況については当社が2026年8月に21社のサイトを巡回して調べた結果を、契約条項については契約前に見る項目を参照しています。相談件数やその傾向は測定していないため、割合は書いていません。